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スティーヴン・オカザキ監督作品「マッシュルーム・クラブ」

解説

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『Days of Waiting/待ちわびる日々』(1990年)でアカデミー賞を受賞した日系三世の映画作家スティーヴン・オカザキ。本作品は、オカザキ監督が原爆投下から60周年を迎えた2005年当時のヒロシマの現在を考察し、自らのナレーションを交えながらパーソナル・フィルムとして仕上げた短編ドキュメンタリーである。「はだしのゲン」の作者・中沢啓治、あの日亡くなっていった人々のボタンを河原で拾い続ける佐伯敏子、そして母親の胎内で被爆した原爆小頭症患者とその家族の会「きのこ会」など、10人の被爆者が登場。見るものの魂をゆさぶる個々の物語の先に描かれているのは、ヒロシマで起きた惨事の記憶が風化しつつある日本の現状だ。日米両国で大きな反響を呼んだ最新長編作『ヒロシマナガサキ』(2007年)の原点とも言える本作品は、2005年にアカデミー賞短編ドキュメンタリー部門にノミネートされた。

映画評

日系三世のオカザキ監督が人類史上初めて原子爆弾が投下された都市広島を訪れ、惨事の記憶が薄れつつある日本社会の現実を伝えている。広島で行われる厳粛な祈念式典。原爆の惨状に目を伏せる人々…。そうした中でオカザキ監督は、広島で何が起こったかを人々の記憶に留めようと模索する被爆者たちに出会う。しかし、その人々の数は年ごとに少なくなっている。

この作品は、原爆投下の原因や責任追及を目的としていない。作品が掘り下げているのは、「過去を記憶に留めるか」それとも「過去を葬り去るか」に揺れる人々の思いなのである。『マッシュルーム・クラブ』は新しく撮影した映像が大半である。そこにオカザキ監督自身のナレーションと1945年からの痛ましい映像が加えられ、この作品に強烈な印象を与えている。この作品は厳粛であり、物静かであり、そして途方もなく悲しい。
(ロサンゼルス・タイムズの映画評より一部抜粋)

アメリカ
2005
35分
短編ドキュメンタリー
カラー
 
原題:
The Mushroom Club
製作・脚本・監督・撮影・編集:
スティーヴン・オカザキ