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『花はどこへいった』から3年——坂田雅子監督 最新作 沈黙の春を生きて Living the Silent Spring ベトナム、アメリカ——いまだ癒えぬ枯葉剤の傷痕

物語

1962年にレイチェル・カーソンが著した『沈黙の春』は、当時隆盛を誇った農薬の危険性を予言し、DDTが禁止されるきっかけとなった。

一方、その頃ベトナムでは、ジャングルにひそむゲリラの隠れ場所をなくすため、米軍による枯葉剤散布がはじまった。枯葉剤は農薬と同じ成分を持つが、人体や自然環境に多大な影響を及ぼす、猛毒のダイオキシンが含まれていた。

当時のアメリカ政府が「人体に影響がなく、土壌も1年で回復する」と説明していた枯葉剤は400万人のベトナム人に直接散布され、その被害は戦後35年を経たいまも続く。当時ベトナムに駐留していた米軍兵士も枯葉剤を浴び、帰還兵の多くがいまだにその影響に苦しんでいる。被害は彼らの子供や孫の世代にまで及ぶ。

帰還兵の娘、ヘザーは片足と指が欠損して生まれた。父の戦場であったベトナムを訪ねたヘザーは、両国の被害者が繋がっていくことの大切さに気づく。

本作は、枯葉剤の刻印を背負ったベトナム・アメリカ、双方の子供たちの困難と勇気を描き、レイチェル・カーソンの予言的言葉に再び耳をかたむけることの大切さを訴える。

シグロ
2011
<87分>
長編ドキュメンタリー
HDV・カラー
日本語、英語、ベトナム語
 
企画・監督:坂田雅子
製作:山上徹二郎
編集:ジャン・ユンカーマン
ナレーション:加藤登紀子
撮影:ビル・メガロス、山田武典、坂田雅子、ロバート・シーモン
整音:小川 武
音楽:グエン・タイン・トゥン、難波正司