1997年3月30日、日本で最大の規模を誇った三池炭鉱は閉山しました。でもその歴史を、「負の遺産」と言うひともいます。囚人労働、強制連行、三池争議、炭じん爆発事故・・・。過酷な労働を引き受け、誇り高くやまに生きた男と女たちの証言を聞き続け、7年がかりで完成させました。勇気をもって命がけで生きること。そのひたむきな力。今さらではなく、今だからこそ未来への思いを込めて伝えたい。
150年以上にわたる、三池炭鉱の歴史に、初めて正面から向き合った映画です。
三池炭鉱の廃坑跡に足を踏み入れたその瞬間です。地底から、働いていた人の声が本当に聞こえたような気がしました。その時から炭鉱(やま)の本当の声を聞こうとする、私の長い旅が始まりました。炭鉱の残した人とものは、あまりに力強く魅力的でした。なのにその足あとを消したい人がいる。怒りが湧き起こりました。
私一人でできたわけではありません。まちの歴史と向き合おうとした行政、自分たちの思いを伝えようとした市民と撮影スタッフの、不思議な共同作業から生まれました。100人近い方たちの証言と30を越す炭鉱関連施設の撮影。地下深い危険な場所で石炭を掘り続け、日本を支えた無数の人々がいます。私は炭鉱の女たちのエネルギッシュな生き様に、何度も涙を流しました。三池炭鉱の歴史は、日本が歩んだ戦争と平和の道、そのものでもあります。石油へのエネルギー政策の大転換の中、炭鉱は閉じられました。
これは過去を描いた作品ではありません。アジアフォーカス・福岡映画祭で初公開され、会場で涙する多くの方に会いました。未来へ向けて勇気ある一歩を踏み出す、大きな力がみなぎります。