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みつばちの撮影について
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ドキュメンタリー映画「みつばちの大地」の最大の魅力は、ミツバチの生態を見事にとらえた実写のマクロ撮影にある。このように撮影されたミツバチをスクリーンで見ることは、前代未聞と言っても過言ではない。撮影は、ミツバチの活動が活発になる春に行われ、2年にわたって合計105時間の映像が収められた。

イムホーフ監督は、本作の主役ともいえるミツバチの撮影のために、古い工場に専用のスタジオを用意した。撮影にあたり用意されたミツバチは、35日間の撮影で合計15コロニーにも及び、一匹のミツバチを撮影するために10人のスタッフがついたこともあったという。撮影スタッフたちは、内視鏡カメラやマクロ撮影を用い、女王蜂誕生の瞬間やミツバチのダンスなど、普段、我々が目にすることができない巣箱内の様子を捉えた。そして、本来は真っ暗闇である巣箱内に黄金色に輝くミツバチの世界を作りだし、コロニーが一つの生命体として機能するミツバチの驚くべき知能と社会性を明らかにした。

通常の撮影では、ミツバチの羽や触角、舌などの動きは早すぎて人間には知覚できないので、今回はハイスピード撮影を駆使し、巣箱内の様子は秒速70コマ、飛行中は秒速300コマで撮影された。イムホーフ監督が特に頭を悩ませたのは、ハイスピード撮影は強い明かりを必要とするので、そのために生じる熱の問題だった。蜜蝋を溶かさず、ミツバチが弱らないよう、太陽の光を鏡に反射し撮影に臨んだ。

また、飛行中のミツバチを撮影するにあたり、ミニヘリコプターや無人偵察機に小型カメラを設置した。飛行中に行われる女王蜂の交尾をなど、生命のダイナミズムを感じさせる映像は、映画のハイライトの一つとなっている。

こうした撮影は、チーフカメラマンのアッティラ・ボアだけでなく、ミツバチのスペシャリストとも言うべき養蜂家たちの協力無しでは出来なかった。