•  more than honey
ストーリーと出演者

ストーリー
マークス・イムホーフ監督は、世界中でミツバチが大量に死んだり、失踪している事実を知り、その原因を求めて旅にでる。
その旅は、スイスの山岳地方に住む養蜂家にはじまり、世界中へと広がっていく。アメリカでは、ミツバチが受粉のために全米を農園から農園へと長距離輸送されてゆく姿を取材し、オーストリアでは、女王蜂を育て世界中へ発送している一家に会う。中国の一地方では、文化大革命の時にミツバチを退治したため、花の受粉を人間の手で行っている姿をとらえ、米・アリゾナ州では、キラービーの養蜂家に会う。そしてミツバチの驚くべき知能と社会的な共同生活について、ドイツの研究者にインタビューする。旅の最後の地は、イムホーフ監督の娘家族のベア=イムホーフ夫妻が研究をすすめるオーストラリアである。ここでは、ミツバチの大量死がまだ始まっていない。彼らは太平洋に浮かぶ孤島に人工交配させたミツバチを放っている。果たしてこの島は、ミツバチにとってノアの方舟になるのだろうか?

出演者

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フレッド・ヤギー FRED JAGGI (スイス)
スイスの養蜂家フレッド・ヤギーは、美しい山岳地帯でミツバチと共に生活している。彼は伝統的な養蜂に大きな価値を置いている。フレッドが飼育するのは「在来種の黒いミツバチ」。この種はひんぱんに新しいコロニーをつくることで知られているが、蜂蜜をたくさん作ることでも有名だ。「彼らが棲むのは、この山岳地帯だ。これからもずっとそうだ」。フレッドの大きな悩みは、近くの谷の養蜂家が飼っている黄色いミツバチがときどき迷い込んでくること。彼の女王蜂の一匹が黄色い蜂によって、異なる種が混ざった卵を産み始めた。フレッドは迷うことなくこの女王蜂を殺す。しかしある日、フレッドのミツバチが病気になり、殺処分となってしまう。病原も、黄色い蜂が連れてきたと疑う。
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ジョン・ミラー JOHN MILLER (アメリカ)
アメリカの養蜂家ジョン・ミラーは、伝統的な養蜂から離れて、経済優先の養蜂を行っている。アメリカ全土を農園から農園へと移動し、ミツバチを受粉のために働かせて大きな収入を得ているのだ。巣箱ひとつが150ドルで、一度に600万ドルの収入になるという。散布される農薬がミツバチの生命をおびやかし、長距離移動のためにストレスを与え、病原菌や寄生虫に感染するリスクがあることをわかっているが、彼は金儲けのためには仕方ないと考えている。だから彼のミツバチはもはや抗生物質などの薬品なしには生きられない。しかし、彼の飼うミツバチも大量に死滅し、これまでにない打撃を受ける。
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ランドルフ・メンツェル教授
PROFESSOR RANDOLF MENZEL (ドイツ)

ベルリン自由大学の神経生物学者ランドルフ・メンツェル教授は、長年、ミツバチの意思決定を研究してきた。一つのコロニーにはおよそ5万匹の蜂がいる。その一匹一匹が、成長に応じて命令なしに役割を担い、巣の暗闇の中で、触覚などを使って情報をやりとりしている。彼は、蜂の群れを一つの感情を持つシステム、一個の生き物のようだという。
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ハイドルン・ジンガーと娘のライネ
HEIDRUN AND LIANE SINGER (オーストリア)

女王蜂を育て、世界58カ国に販売しているオーストリアの養蜂家母娘。ジンガーの家族は3代にわたって養蜂を行ってきた。彼女の娘も、仕事のやりかたを学び始めている。ハイドルンは拡大鏡をかけ、小さな匙で蜂の巣から、育種用の幼虫をとり出す。その幼虫を人工的につくった女王蜂の巣房に入れてコロニーに戻すことで、働き蜂になるはずの幼虫が女王蜂として育てられる。
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チャン・チャオ・スー ZHANG ZHAO SU (中国)
中国の花粉供給者。中国では文化大革命時代、穀物を食べるので数十億の雀が殺された。そのために昆虫が異常発生し、それを退治するために大量の殺虫剤が使われて、ミツバチも犠牲になった。そして一部の地方では未だにミツバチが存在しない。代わって受粉を行っているのは人間だ。南部の農家から花を購入して花粉を採取し、仲介者を通じて、これから開花期を迎える農家に販売する。
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フレッド・テリー FRED TERRY (アメリカ)
アリゾナ州在住の養蜂家。フレッド・テリーがキラービーを捕まえ、隔離した蜂場に移して飼っている。キラービーは、ヨーロッパ種とアフリカ種の交配により生まれた蜂だ。かつてブラジルのサンパウロ大学の実験室からキラービーの26の群れが逃げ出し、中南米を経てアメリカ大陸に達した。キラービーは非常に攻撃的で、扱いにくい。しかしテリーは、彼らを殺すのではなく、砂糖水を与える。蜂はそれを貪るように飲む。「この蜂は見たことがないほど凶暴だ。しかしこの蜂は病気にならない。良質のハチミツを作る」という。
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ボリス・ベア教授とバーバラ・イムホーフ博士 
BORIS BAER AND BARBARA IMHOOF (オーストラリア)

オーストラリアでミツバチの免疫システムを研究している夫婦。バーバラ・イムホーフ博士は、マークス・イムホーフ監督の娘。オーストラリアは、ミツバチが感染するバロア病(ミツバチヘギイタダニ)の汚染を受けていない最後の大陸だ。彼らは、野生化したミツバチと飼育された女王蜂を交配した蜂を、無人島へ運んでいる。彼らの望みは、未来へと生き延びる能力を持つミツバチの種を繁殖させることである。