イントロダクション Introductin

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目を凝らして見れば、 この世界はきっと違って見える。

人生の光と影、美しさはどこにあるのか? これは一人の初老の女性が「詩」に辿り着くまでの、魂の旅路

遠く釜山で働く娘の代わりに中学生の孫息子を育てている初老の女性ミジャ。たまたま通りがかりに詩作教室を見つけ、子供のころ、詩人になればいいと言われたことを覚えていた彼女は、詩を書いてみたいと思い立ち、通うことにする。だが、花鳥風月を眺めては美しい言葉を探す穏やかな日々に飛び込んできたのは、あまりにも厳しい現実。自分がアルツハイマーの初期症状にあること。孫息子が、少し前に自殺した少女アグネスの事件にかかわっていたこと。信じ難い事実を前に、ミジャはたった一人絶望の中で必死に目を凝らしていく。 これは彼女が言葉を失っていく恐怖にさらされつつ、消えていったアグネスの心に寄り添いながら、一篇の「詩」に辿り着くまでの魂の旅路だ。暗闇の旅路はいつしか微かな灯に導かれていく。そして、ミジャの魂の遍歴をともに巡った観客は、旅路の終わりに立ち会い、最後に紡がれる詩に心揺さぶられることだろう。

社会の片隅に生きる人間を真摯に見つめてきた 名匠イ・チャンドン監督の最高傑作!

これまで一貫して弱者を見つめてきたイ・チャンドン監督は、2年前、『シークレット・サンシャイン』でチョン・ドヨンをカンヌ国際映画祭の主演女優賞に輝かせたのに続き、本作では見事に同映画祭の脚本賞を自ら獲得。さらには各国の映画祭で、最優秀作品賞、監督賞を次々に受賞。人間を見つめる洞察力をもとに比類なき物語を構築する才能が世界に認められ、名匠の座を確固たるものにした。 懸命に生きる登場人物たちに、光と影、美しさと醜さ、善良さと邪悪さ、賢さと愚かさを混在させ、圧倒的にリアルな存在として観客の心に迫る作品を作り続けてきた。今回初めて老女を主人公に据え、人間の中の清と濁を今まで以上に複雑に交差 させた、緻密にして陰影深い物語を織り上げた。人が起こし得るささやかで尊い奇跡をも暗示する本作は、力強く繊細で、まさに名匠イ・チャンドン監督が到達した最高傑作と言える。

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