書籍『エドワード・サイード OUT OF PLACE』
みすず書房
全国書店にて発売中!
採録シナリオ全編、佐藤監督による制作ノートにくわえ、チョムスキー、バレンボイム他、本編でカットされた関係者のインタビューを復元収録。
四六判/256頁/2,100円(税込)
TEL:03-3814-0131
書籍の帯袖に付いている特別割引券を上映会場窓口にご持参いただければ、映画『エドワード・サイード OUT OF PLACE』を前売り料金にてご鑑賞いただけます。本券1枚につき1回限り2名様まで有効。
共著者 中野真紀子さんのコメント
エドワード・サイードの記憶と痕跡を求めて中東各地をめぐり、アメリカの大学も訪れる中で、佐藤監督は多数のインタヴューをおこないました。家族や親戚、友人、同僚、活動家、作家、音楽家など、じつにさまざまな人々が、各人の立場からサイードとのかかわりや、その人柄、その思想を語っています。故人と親交の深かったこの人々の話は、それぞれに内容が濃く、とても興味深いものです。しかし映画には、ほんの短いシーンしか登場しません。
「エドワード」の映画だからと、わざわざ時間をつくって熱っぽく語ってくれた友人たちのコメントは、このまま捨ててしまうにはあまりに惜しいものでした。そこで早い段階から、映画とは別のかたちでまとめようという話がなされました。最終的には、制作ノートや映画の採録シナリオと一緒になって、多面的かつヴィジュアルで手にとりやすい書籍としてお届けすることができるようになりま した。
佐藤監督の制作ノートには、ひとりの日本人としてサイードとパレスチナという巨大なテーマに取り組むに際しての悩みや迷いが率直かつ謙虚に告白されています。対象についてわかったことを説明するのではなく、むしろわからないしわかるはずもない部分、絶対に克服されない距離感を描いているのだというような話をなさったことがありますが、そのことは「阿賀に生きる」の撮影のために3年間を過ごした新潟水俣病の村においても同じだったようです。中東という、ある意味で日本とは対照的な風土とそこに生きる人々に、自分はどこから向き合って対話していくことができるのだろうと考えさせられます。「他者との共生」という言葉の重さを映画は沈黙によって示唆しているようです。そこには入り込む余地のなかった過剰なまでの言葉と思想は、書籍というふさわしいパッケージにまとめられました。願わくば、この二つの作品のあいだにも、たがいを補い深めあう共振が起こってほしいものです。