作家名

写真 周囲の人たちの、微笑みの真ん中にいる芸術家。妙な言い回しだが、舛次崇(通称シュウちゃん)は、そんなアーティストだ。これは一見なんでもないことのようだが、実は、とても貴重な存在で、彼ほど個性的な絵を描くアーティストは、普通、独断的で、協調性に欠ける傾向がある。普通とは、健常の画家たちのこと。オリジナルな感性を保つためには、反社会的な行動もやむなし。 自己をそのように正当化し、排他的な行動を敢えてとる画家がいるが、シュウちゃんはそんな不自然な生き方をしていない。そんなに構えなくても、たっぷりアブストラクトなのだから、平然としている。シュウちゃんがカッコいいのは、そこだ。前衛を、生まれながらに備えている。無理して前衛ぶっている芸術家達にとって、彼の自然体は、さぞ羨ましいことだろう。

 ふだん、すずかけ作業所ミシン班でかやふきんの縫製をしているシュウちゃんは、男四兄弟の長男。母親の和子さんは、気持ちの豊かな女性で、ゆったりと子どもたちを育てている。シュウちゃんの叔母さんにあたる島田つや子さんは、とびきり明るく、しかも意志強固な女性だ。彼女は、シュウちゃんを、どんどん社会へ連れ出してきた。堂々と胸をはって、障害を持った幼い甥っ子の手をとり、メインストリートを闊歩してきた。シュウちゃんのまわりには、明るくてたくましい人がたくさんいる。そんな人たちのまん中で、彼は、伸びやかな感性を熟成させていった。

 彼は、植物や花を写生しているようで、実は、対象物から受ける「感じ」を描いている。小さな植木鉢から窮屈そうにはみ出している植物の生命力を、直感的に表現してしまう。その感性は、あまりにも無防備でおおらかなので、見ている方が、恥ずかしくなってしまうほどだ。彼は、描き終えた作品にも、おおらかで、潔い。真に才能豊富な人は、あれこれ言い訳をしない。

「なあに芸術なんて、こころのあくびみたいなものさ」
彼はそう笑っているかもしれない。

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